ハイダラ「この間は本当にありがとう。あの衣装、とっても気に入っているんだ。カディムにも……、ああ、私のしもべなんだが、そのカディムにも触らせたくないくらい！　……、て、手入れは、させているけれど。（自分で手入れが出来ない不器用者）」

（いつの間にか、黒髪で肌の浅黒い長身の男がハイダラの背後に控えていた。カディムと呼ばれたその男も、ザーネに向かって深々と礼を）

ハイダラ「……あのね、最近、何となく、妙な空気を感じていてね。それで、少し気になって、会いにきた。……ああ、君の笑顔も、その眼差しも、その気配も、とても好きだ。大好きだよ。（小さく笑いながら、枯れ枝のように細い青白い指先で、三日月の笑みを刻む相手の頬をそっと撫で）……ふふふ、急に、改まって、こんなことを言うのはおかしいかもしれないけれど、言いたい事は、言っておくに限るのさ」

（それから暫く、何事か考えるように首を傾げ）

ハイダラ「……、ザーネ。（ほっそりとした相手の手を、そっと取り、今度は自分の顔へに触れさせるように導き）……青い影を少しだけ私に、白灰色の闇を少しだけ君に」

ハイダラ「約束したろう？　君が呼んだら、私はいつでも君と踊ろう。そう、君が呼べば、私はいつでも応えよう。妖魔の約束は誓約だ。（色の薄い瞳を細めて微笑んで）……私と、ザーネ、君を繋ぐよ」

ハイダラ「ああ、そうだ。これをあげる。……我が手にあったものは我が命。（そう言いながら手渡したものは、琥珀色に透き通った水晶のような結晶。不思議な事に、光の加減で青みがかった影が出来る。細い鎖と金具がついていて、耳飾り等の装身具にもなる様子）」

ハイダラ「……いつでも、いつまでも。君が望んでくれるなら。たとえ君が、どこにいようとも。たとえ君が、君を見失いそうになっていても。……私は望んでいるから。ザーネ、私は、君の声に耳を澄ましている」